1フロア3看護単位としコンパクトで機能的な「高品質・ローコスト病院」を実現。センターストリートを中心とした構成とし、救急ホットラインの整備など「患者様にやさしく、迅速な医療の提供が可能な病院」。病院としてだけではなく、多用途への可変が可能な弊社発案の「コンバーチブル・システム」を採用。
将来の医療需要の変化・多用途への可変が可能な「ユニバーサルスペース」「セントラルコア」「フレキシブルシャフト」「設備シャフト」「ライトウェル」を組み合わせた可変システム「コンバーチブルシステム」(弊社発案)を採用し、用途変更に伴う改修工事等のコストを削減する長寿命化を目指しました。
「スタッフコモンズ」は建物の中間階の3階スタッフオンリーフロアに配置し、ほぼすべてのスタッフが通過するフロアの中央に計画することでスタッフが必然的に集まれる「交流の場」を実現しました。また、災害時には災害対策本部としての役割も担うことができる計画としています。
中央のスタッフステーションを中心に重症個室・見守りカウンターを設置し、病室には見守り窓を設けることで患者の見守りに配慮した計画としました。また、スタッフステーションから連続した位置にコミュニケーションカウンターを設け、患者への食事介助や団らん、見守りができるスペースを設置し、すべての患者への見守りとスタッフの連携・働きやすさを実現した病棟計画としました。
意匠中山 大輔
総括河﨑 邦生
意匠中村 守宏
意匠中村 守宏
左中山
中央中村
右河﨑
中村真剣に病院の減築を考えた日本で最初の病院だと思っています。将来の人口減少に伴い、病院がすべて病院であり続けることは難しくなるのではないかと考え、病院の最上階が他の用途、例えば市の福祉・保健施設や図書館、役所の機能などに容易に可変できたらいいのではないかと考え「コンバーチブルシステム」を提案しました。
河﨑将来の市の財政的負担をなるべく軽減させたいとの思いが一番でしたね。
中山具体的には5つの要素から構成されています。「ユニバーサルスペース」12m×15m の大スパン空間。柱が少なくプランの変更が容易になります。「セントラルコア」中央にメインコアを集約し、様々な平面計画に対応します。「フレキシブルシャフト」フロア端部に3ヶ所のシャフトを計画。専用EVの設置や機械室、電気室、倉庫等を想定しています。「二重床及び設備シャフト」改修工事の際の下階への影響を考慮し、病棟中央と外壁側は二重床にし、かつ各所に設備シャフトを配置。「ライトウェル」:採光、換気、排煙の確保。オープンシャフトとしても機能します。これらを組み合わせることで将来の可変に柔軟に対応できると考えました。フレキシブルシャフトは実際に将来EVシャフトとして機能できるように構造検討を行い、耐荷重500kg/㎡の床を増設できるように梁にブラケットを仕込んだり、最上階の病棟中央部分はH800mmの床下げをし、将来対応のスリーブも見込んでいます。
中村今までの病院は各部門にスタッフの休憩室やカンファレンス室などが点在していました。これを一か所に集約して、広いスペースと多職種が交流できる場とすることでチーム医療が加速するのではないかと提案しました。はじめは「こんなスペースがあってもだれも使わない」「各部門に休憩室を設置してくれ」というご意見もいただきましたが、病院の全スタッフを対象にアンケートを行った結果、このスペースの有効性と柔軟性、必要性を理解していただくことができました。
中山当初は否定的だった病院スタッフからも、竣工後は「スタッフコモンズは成功だね」という言葉をもらいました。実際には休憩以外にも、実習、ワクチン接種会場、災害対策本部としても機能しているようです。
河﨑スタッフコモンズの成功の要因は3階のスタッフオンリーフロアの中央に配置したことでしょう。医局、事務、更衣、幹部室などに隣接し、ほぼすべてのスタッフが必ずこの場所を通るということで、利便性の良さから偶発的な交流が生まれているんだろうと感じています。
中村また、1,2F のスタッフ通路、4F のOPエリアまでここから階段でダイレクトにつなげたのも良かったと思います。縦のアクセスにも配慮したことでさらに利便性が向上しました。
中村家具はすべて移動式としたので、状況に応じたレイアウト変更が可能になります。「スタッフコモンズ」は竣工してからも進化し、変化を続けていってほしいと願っています。
中山正面入口の特徴になっているルーバーは「茶畑」をイメージし、島田らしさを表現しました。モノトーンの中に差し色の緑を入れることで、建物に調和し、アクセントとして効果的な配色となりました。実際の色の選定には、現場で数十枚の様々なサンプルを作成し、非常に悩んだ中からこの配色としました。
中村中央に大井川が流れる島田は東海道の宿場町として栄えました。今でも一部宿場町や東海道の石畳などが残されており、このような歴史からインスピレーションを受け「SHIMADAプラザ」「センターストリート」の内装デザインの参考としました。東海道の石畳をイメージしたタイルや大井川の流線形や水面のせせらぎなどをデザインとして取り入れています。
中山病室は「ホテルライク」をコンセプトに計画し、ブラケット照明ではなくマルチライトと3ヶ所の間接照明としました。照明はモックアップで確認し、患者が寝ていてもまぶしさを感じないようにディテールと光の強さ、色温度にも気を配っています。
中村ベッドヘッド側には医ガスやコンセントを設けず、家具にすべて埋め込む計画としました。高さや位置など細かなチェックをモックアップの中で看護部の方と何度も繰り返して決めました。こちらが想定していなかった使い方を指摘され、対話の中から生まれた、新たな使い勝手の良い病室が実現したと思っています。